2021年1月13日の夜

川からは湯気が立ち、はるばる温泉郷にでも来たような朝だった。昼間は気温が上がり、ぽつぽつ咲いている梅の花を見るたび、鼻の穴をおっぴろげて、あの独特な甘い香りを嗅ごうとした。日が伸びたらしく、帰りの空はまだ明るくて、それだけで嬉しい。富士山が見えて嬉しい。鷺が川に居てワクワクした。そんな夕方だった。風の中には春の粒子――植物から発せられるなんらかの成分――が浮遊していた。鼻腔は優秀だ。