青空

空は青くて晴れていて、真っ白な富士山に手が届きそうだ。人々はいまから火葬場へ向かうらしく、黙りこくっている。物音ひとつ聞こえようものなら、きつい一瞥をその音のする方へ送りつけるつもりでいるのが見て取れた。それにしても、あんまり人々が静かなので、わたしは、死んだのはわたしなのではないかとすら考えた。しかしその直後、わたしは陽の眩しさに目を細めることになり、生きているらしいことを悟ったのだった。ただ、あんまり人々が静かなので、このままこの列車はなんらかの事情で大破し、わたしは死にゆく運命なのかもしれない、別れの言葉を用意し伝えねばならない、と一瞬だけ、まさしく一瞬だけそう思ったのだ。空は青くて晴れていた。少しだけ怖くなっていた。