A T C H U R W O F M E E F

とってもATCHURWOFMEEF

常々思うのだ

ゲイは男とセックスをするんだけど、あれは、男の人間とセックスをしようと思ってしているんじゃなくて、男の人間の"男らしさ"とセックスをしようと思ってしているし、したいんだと思う。もしかすると、男女に於いてもそうなのかもしれない。身体は、身体が魅力に感じるものを求める。頭と身体は別だと思う。セックスのときに盛り上がっても、会話のときに盛り上がるとは限らない、逆も然り。だから、"合う"友達は何人いてもいいと思う。何人でもいたほうが、楽しいと思う。

かわいいくまのぬいぐるみ

終点で降りるとき、かわいいくまのぬいぐるみが別の座席の下に落ちていた。彼の名はダッフィー。あるいは彼女の名は。わたしはその名前は知っているが、性別までは知らなかった。どちらにしても、かわいいくまのぬいぐるみ。わたしは拾わなかった、運転手が見回りに来たとき、きっと拾ってくれるだろうと。バスを降りると、白いワイシャツにスカートを合わせたシンプル女子高生のバッグにかわいいくまのぬいぐるみがぶら下がっていた。彼女の名はダッフィー。あるいは彼の名は。もしかして、この人が落としたのかと思った。かわいいくまのぬいぐるみが落ちていた話。

次に電車に乗ると、おじさんの手提げにもかわいいくまのぬいぐるみが"付着"していた。言い方ってもんがある。まるで、くまのぬいぐるみのシミが付いているような言い方。彼の名はダッヒー。みんなはちゃんと呼んであげてね。

府中競馬場花火大会の日に

キョウチクトウ、ノヂシャ、キク科の何か、とにかくいろいろだよ」

「とにかくいろいろの花の何があるの?」

「え、知らないの?」

「知らないよ」

「府中競馬場だよ?」

「知らないってば」

「花浴び大会」

「花火大会か」

「違うって」

「違うって?」

「は・な・あ・び大会」

「はなあび?」

「そう。花を浴びるんだ」

「それ、どう楽しむの?」

「浴びて楽しむ」

キョウチクトウはまずいでしょ」

キョウチクトウみたいな形の花だよ」

「それはキョウチクトウでしょ」

「あれもある。ニオイバンマツリ」

「こんなクソ暑い時期に無いでしょ」

「ノヂシャに関しては20トン集めてあるらしい」

「口に入ったら窒息するわ」

「口には入れない、浴びるだけ」

「常に口が開いている人っているじゃん」

「閉めさす」

「なに、こうやって?」

「そそ、こうやって」

「それは強引すぎる。もっとやさしく、こうでしょ」

「それはやさしすぎるって、こう、フンッ!て」

「背が縮むなあ」

「キク科の何か、とは?」

「こっちが聞きたいわ」

「花火ってさ、全部キク科だよね」

「……たしかに」

「しかも、外来種ばっかり」

「日本のタンポポの可能性もあるよ」

「ないね。河原に挙って咲いているキク科だね」

「名前を」

「知らないわ」

「あら、どうしちゃったのよ」

「あんただって、どうしちゃったのよ」

「知らないわ」

「てんで知らないわ」

「て〜んでんむ〜しむし」

「で〜んでん、ね」

「ハイハイ、点検」

「ハイハイ、天然」

「千年」

「極楽」

「せんねんきゅう〜」

「アチッ!何?」

「千年灸」

「こんなに熱い千年灸初めてだ」

「いい香り!ご飯が進みそう」

「進むわけあるか」

「進むわけアルヨ」

「おいおい、今度はどちらさま?」

「あ、やったとバス来た」

「え、違うよ。バスの着ぐるみだよ」

絶不調ベビー

絶不調ベビー、泣く。その涙、彦星になりORIHICAへ。絶不調ベビーに蠅が集る。相当絶不調。体感温度23度前後の掌がしきりにグーパーされて、黒い靴が徐々に白んでいく。アナウンスが途切れる。絶不調ベビー、網に絡まる。

岬と葵

「わたしはいつからこんなつまんない人間になっちゃったんだろうね」

「大丈夫、最初からだから」

「そうだよね」

畑で土が踊っている。スベリヒユが雑草に見せかけて栄養を蓄えている。頭にタオルを被った男性はまだ若いらしく、せっせと両手で土を掬って空高く投げている。どうりで土は踊るわけだ。彼の頭に巻いたタオルは、洗うのが嫌になるのも容易なほどに粒子たちを大事にしていた。

隣ではカップルがキャハキャハしている。どうやらゲームをしているらしいのだが、画面に表示された【pull!】を見事に全て【push!】していた。そのため、ゲームをファーストステージから進めることができないようで、それを楽しんでいた。あまりにも【push!】するせいで、カメラのレンズが前のめりになり、窓の外のマンションを眺めていた。

「わ、コングラ!コングラだよ!」

岬は叫んだ。

「なになにコングラって」

興奮している岬を宥めるように葵は落ち着いて問いかけた。岬は葵の目を見つめた。

「コングラ………こんぐらちゅれいしょんのことだと思ったけど、違うのかな?」

「わたしは知らないよ」

「でもコングラ」

かつて街を埋め尽くしていたとても硬いものは今やすっかり剥がされて、一箇所に集められていた。硬いものは山積みになり、カエルの鳴き声をその内側から発し、街道を走る車たちをいちいち引き留めている。岬は、足下の緩んだネジを撫でた。

「なんか締まらなくなっちゃって」

 

きつねサラダ

飴玉ハウスから奪ってきた一個の飴玉センシティブが、やはり昨日の事件に関係しているらしい。この話は墓場まで持っていこうと思う。新しい和食スタイル店『蕎麦うどん』で流行りのおにぎりご飯を三皿食べながら考えていた。オムライスが「こんにちは。しばらくぶりですね。電車はあれから着きましたか?なんだか、終点から先があったとかないとか……」と尋ねてくるんじゃないかと不安になったのも束の間、ここは『蕎麦うどん』だから「安心せい」の一言で安針塚。チェックポイントカードを発行してもらい、次回来店時はチェックポイントにチェックを入れてからでないと『きつねサラダ』の注文が不可という。「おにぎりご飯は注文できますか?」と訊いたところ「可能です……もしかして飴玉センシティブについて知っていらして?」と訝しげな顔をされ「知らないです。蕎麦湯でも浴びたんですか?」と、いかにも正論を返してしまい、そそくさと退店。なぜ飴玉センシティブを知っているんだ?不安になったが、財布の中の五千円札の凸凹をなぞって落ち着くことに成功。ジャグリングおばさんかいつも被っているみたいな帽子が落ちていたが、こういうのは拾わない。帽子と見せかけてもぎもぎフルーツの包装紙だというのは、SNSで有名な話だ。

とんでもないです

ダンベルが転がりますと、重いですから、転がるんですよ。チャイニーズレストラン『まぐろ』まで転がって、終いには、カプセルホテル『たまご』まで転がるんです。アジャスター付きのマグネシウムが背伸びして臓器に効果を与えて、変更可能の栄養素が次期市長を予想します。熱い味噌汁の塩分は冷たい味噌汁の1/4にまで減少する温度と塩分の関係式を用いて、アジャスター付きのマグネシウムが背伸びを調整します。驚くべきは、窓の汚れは落とさないほうが金運がアップするということです。マジかよ!?と思うかもしれませんが、猫のいる家ではネズミの足音を聞きとりやすいそうですよ。

満と聡

「ごゆっくりどうぞ」

ウエイターが席を離れる。ふたりは目を合わせた。

「それ、なに?」

イカとアスパラのペペロンチーノ。カルボナーラ?」

「そう」

「……」

ふたりは見つめ合って沈黙した。

「じゃあ……」

聡は沈黙を破った。それを聞いて、満は口角を更に上げ、目を輝かせた。声は興奮のあまりわずかに震えた。

「今日はパスタということで……」

「始めましょうか」

ふたりはほとんど同時にフォークを掴み、徐ろに巻き取り、口へ運んだ。

ズズッ…ズズズズ……ズチュ…

「ねえ、すごい音………あの人こっち見てるし。もしかして、それがテーマ?」

聡はすっかり飲み込んでから答えた。

「そう。パスタのスは、啜るのス」

「なるほどね。大胆」

ふたりは尚もゆっくりと食事を続けた。

ズズッ…ズズズズ……ズチュ……

「イテッ!」

「え、大丈夫?」

「イテテ……見てくれよ、これ」

満は聡の親指を見た。

「やだ、パックリ割れじゃない」

「そう、パスタのパは、パックリ割れのパ」

「まさかのテーマ」

「今日のために一週間前から仕込んだのさ」

ふたりは半分くらい食べきった。

「ちょっとアジヘン」

満はタバスコを手に取るなり「タバスコスコスコ、タバスコスコスコ、タバスコスコスコ、チュウ」とやや大きめの声で叫び、瓶を咥え込み、緑の汁を吸い上げた。

「おい!やめろよ!それはマジでマズい」

瓶の中身は半分無くなった。

「う〜ん!誰も見てないよ」

「いや、見てるから」

「パスタのタは、タバスコを飲むのタ」

「ほら、ウエイターが来た」

満はウエイターに説明した。ウェイターは戻っていった。

「聡がトイレ行っているときにね」

満は新品のタバスコを持ってきて、席に据付のものと並べて置いていた。それは店には置いていない緑色のタイプだった。

「いやあ、焦った。満ってそんな大胆だったっけ」

「女は度胸でしょ」

「ん、まあ」

ふたりは水の入ったグラスで乾杯した。

「ところで、パとスは?」

「聡だって、タがあるじゃない」

「俺は本当の最後」

「わたしは、今真っ最中」

「真っ最中?」

聡は満を舐め回すように見た。

「やめてよ、舐め回すように見ないで」

「いや、舐め回すだろ。パ……パ……なんだ?」

カシャン!満のスプーンがテーブルから落ちた。

「あら失礼」

「いい、俺拾う」

聡はテーブルの下に潜り込んだ。

「満」

「なに」

「おまえまさか」

「そのまさかよ」

「ノーパン!?」

また遠くからウエイターがこちらに注目している。満は強く囁くように言った。

「お兄さん見てるから。声に気をつけて、それからもう出てきて」

聡は目を丸くして出てきた。

「家から?」

「まさか!ここ来てすぐ、トイレに行ったときにね」

「やけに今日はスカートが短えと」

「パスタのパは、パンツを脱いでのパ。スは、スリリングにのス」

そう言って満は残りのパスタを巻き始めた。

「いやあ、驚いた」

そう言って聡も残りのパスタを巻き始めた。

食事を終え、満はトイレへパンツを穿きに行き、聡は会計の計算をしていた。

「お待たせ」

「じゃ、行きますか」

聡は伝票を出した。

「お会計が……2678円……」

レジの男性は、やや戸惑っていた。

「あれ?違ってない?」

満は伝票を覗き込んだ。

「満」

聡は口元で微笑んだ。

「え?」

「パスタのタは、tax13%のタ」