正し渣

女医は言った。「そうであるからして緑の蔦に絡まれる!いやならいやだと言えばいい!ましてや緑の蔦など、尻もちをつく程度のことだ!」

岩は言った。「まったくわかっておらん女医。緑の蔦の腕も脚も、そなたは知らん女医。それでは人生まことにエン女医女医」

女偏に医と書けば、風が吹くなり法隆寺。山の果て、谷の淵、川の奥、海のチュギュ、パクパクチュギュ。今の今まで急かされ続けたパーセンテージはすっかり忘れ去られて、いまや100分の6としてそこに鎮座していた。

女医は言った。「ならば標識だ。標識くらいなら絶世だろう?」

岩は言った。「んなことあるま女医。標識など、ほんの街角だ」

ケースバイケース、という言葉がある。ケースバとイケースの男女二人にによる、ぶっつけ本番奇天烈問題解決ソリューションα

TUBEが流れているバーでカクテルを飲んでいるのは岩だ。豆はグラスを拭いており、道は伸びていた。草のサラダは菊の器に載り、形の麦の魚とともに味だ。岩は一口味を噛んだ。

「いや〜こりゃ味だな!」

岩はキツいジーンズの裾を緩めて、ベルトを締めた。ことさら、良いことが起こりそうな予感がした。女医のことは、川を思えば流れた。谷を思えば落ちたし、山を思えば迷い、海を思えば沈んでいった。それは、止まるまで待てない子供がやはり止まるまで待たないのと同じくらいに明白だった。岩は、死んでいるなと感じた梶田。どうも5月の湿り気が、かつて重すぎた日々を過ごした過去も現在も未来。きれいに生きようなんて思うほど、きれいに生きられない自分が醜かった。体中に意味のない刺青を入れて、意味のないシャツを着て、意味のない靴を脱いで、意味のないジャケットは捨てようかと思った。意味のないバスはタクシー、意味のない電車は徒歩、意味のないビルは砂、虫の息。まあ、もう少し楽に生きたいよね……と呟いたふりして隣の席の耳に囁いた。耳は驚いた。「チャーハンの話はもう聞いたよ……」