大通りから路地に入って信号のない交差点
住所は池之端
標識に従い右から来る道を覗けば
白いセダンと男
小雨のなか 誰かを待っているようだった
途端に傘が開かれて黒い姿は隠された
艷やかな革靴とストライプの裾だけ残された
呆気なく美味しい時間の終了
幾多の女を抱いたような特徴など何処にもないが
貫禄のある雄々しき躯体に暫く脳裏が吸い付いていた
きっと刀のように鋭くて拳銃のように真っ直ぐな眼
――雨が強まる
貪るように思い巡らせ遡る都道
此処は高戸橋
路面電車は悠々とカーブを曲がって遠ざかる
――何処にでも居るんだ 俺 選べねえ