御涙頂戴

九月の台風がつれてきた熱い風のなかで

あの夏から逃げ切ったことをおもいだす

隣のカズコが死んだのは先月のいまごろ

次々に人々が死んでいったのも同じころ

 

半年前に 行ったきりの

トシオは朝方 帰ってきて

八月五日 光うすれる星へ

そのまま 連れて戻った

 

姉さん ほら 起きろよ

すこし 外を あるこう

なにを そんな 驚いて

 

姉さん 具合 わるいか

じきに よく なるから

もう 靴は いらないさ

 

すこし 外を あるこう

いろんなこと あったな