水彩

寂しいとき
知らない誰かが居た
名前を呼べずに
何も損ねないように
ほほえんだり
名前は聞かずに
何も残らないように
はしゃいだり

忘れるためだけの営みを
ただしく忘れて愉しくて

安らぐとき
記憶がしわを寄せる
名前を呼んだら
きっとふりかえって
わらってくれ
名前を呼ぶから
どうかかよいあって
みとめてくれ

識っているということは
ひとつのまぶしい水彩で

孤独のとき
本当に孤独かを疑う
名前を呼んだら
名前を呼ぶから

忘れゆくだろう不完全だ
気張らずゆかしく嗜んで

識っているということを
ああそのまぶしい水彩を