斜向かいの石像 vol.1

汁ガンギニストの小沢さんは、シャチの赤いところを見た時のように驚いた顔をした。それを見たチリバミストの幸田さんは、食器洗い機の器と機を間違えた時のように口笛を吹いて笑った。どうやらとてつもなく凄いモードに入っているらしい。それゆえ競艇場の波が今日も今日とて府中の街に溢れ、背の低い子どもたちが高台に避難するのだ。避難しているあいだ高台のテレビでは、心のささくれとサクレレモンがコラボしてできた糸の中島みゆき触り心地良すぎ問題について討論がなされ、多くの子どもたちが更に水面に近づいてしまった。汁ガンギニストの小沢さんは、目くじらを立てかけた壁で跳ねているトコジラミ調の蝿に話しかけているふうを装ってズボンのチャックを上げた。よりによってチリバミストの幸田さんに声をかけられてしまった。「口にもチャックかな?」盛られたポイズンのイメージが駆け出そうとしている原っぱが急に眼前に広がる。モミジの木が常緑樹になり、静まり返った土の中からLEDが放たれる。モグラの格好をした1羽の鳥がモスクワを目指してたどり着いた先が、先島諸島の最西端の小石の上だったら?小沢さんはゾッとした。