おうちカフェ

「全然伸びていないじゃないか…」ポーチュラカは行き過ぎる男から憐れみの視線を浴びることになった。しかしポーチュラカは不幸ではない、幸せでもない。男は確信している。確信しながら、同時に反省を始めた。我が身を介してしまったがゆえに、7月の終わりになってもまだつぼみをつけていないポーチュラカが、つまらない男のひたすらつまらない思想の餌食になってしまったからだ。いつもそうだ。今からでも遅くない、言葉を用いるなんて金輪際やめたほうがきっといいんだ。そうすれば。そうすれば、やっとインストゥルメンタリストカット―ーキットカット?それは聞き間違いだ。食べたい。

新築は、敷地めいっぱいに建つだろう。きっとテーブルとイスを空の下に広げる余裕なんてこれっぽっちも残さずに。それでも新築は、大地を残さず埋めて聳えるだろう。若夫婦がすぐに野菜を育てはじめたくなるように、入念に大地を残さず埋めて。

そういえば、おとといのパーティーは楽しかったと思うんだ。周りのみんなが楽しそうだったから。飲み放題だとわかっているから、びっくりするくらいみんな浮かれていた。桶に入った一流のシェフの料理なんてどうでもよかったんだと思う。コンビニのサンドイッチでテーブルが埋まっていても、誰も文句は言わなかったと思う。やっぱりパーティーはいうほど楽しくなかった。

ボタンクサギを見てまだアジサイ咲いているんだねと笑っている。ムクドリが電線にとまって、先にとまっていたムクドリに、近づきすぎだと言われている。アジサイアジサイと呼べることを噛みしめる。ムクドリムクドリと呼べることを噛みしめる。