2021年1月7日の夜

入ってみたい店があるけど、常連がいるから入れないなんて言わないで入らなくちゃね。駅、新幹線、男兄さん……。これら入っていい・入ってみるべき名前には、古めかしさがあり、惹かれてしまうんだ。ところで、無責任なようだけど、元気にしていてほしいよ、知らない人たち!見たことのない壁のしみや、踏み入れたことのない床のきずを、見れたらどんなにうれしいかわからない。幾人の唾が蒸発して煙草よりも匂うそのすてきな部屋を、どうにか畳まずにとっておけはしないか。無責任なようだけども!

2021年1月5日の夜の2

無関心の罪、いや、無関心の刑に処されちまった――と言えば、自分のせいではないと言うみたいだけど、気になるまでもなく、気にしてみたいし、好きになるまでもなく、好きになりたい。つまり、効くべき筋肉に集中して、筋トレは行わなくちゃね。

上の空。半分死んだような目をして歩くおじいさんとは異なる形態で、俺は死に始めているんじゃないかな。出家しなくたって大丈夫だったよ、ユニクロのシャツを着ていても、座禅は組めるし、唱えたければ経もどうぞ、というわけだ。アディダスのパーカーを羽織っていてもいいしね。

有機質に富んでいたいだけだよ。ヒカキンのチャンネルを再生したら、匂いが、ヒカキンの部屋の匂いがぷんぷんしてきたら、どうかな。きたないようだけど、ヒカキンの唾が飛んできたら、どうかな。白くて丸い粒を食べたら、イクラとウニの味がして、美味しかった!とか、嬉しいかな。液晶の海を見ながら、パラソルを出して庭で日焼けをしても満足できる体になれるかを心配するけど、大丈夫、明日、青いパッカー車が宥めてくれるんだ!

五感を鈍らせたくないだけだよ。臨場感では満足できない体でいたい。さわれるところまで近づきたいし、近づいてほしい。あなたが、吊り革べたべたさわった手を差し出してきても、握り返すよ。あとで洗うけど!美味や芳香のみならず、不味、臭気、騒音など、これらも世界を鮮やかにする材料として用いたい。ムキでいたいよ、いつか無機になるまで。

2021年1月5日の夜

家のドアを開けた途端、安堵する膀胱のバカ。腹立たしいことのうちのひとつだよ。俺はもう、人になんか腹を立てないことにしたんだ。疲れるってつまり、憑かれちまうことなんだよ。緊急なんちゃら宣言に驚いて、引きこもる生活のバカ。俺の生命が、救助に値するものかわからないときがあるよ。でも、オレンジを纏った逞しい肉体はきっと俺を救おうとするし、サイレンの中を大急ぎで運んでもくれる。いつかほんとうに死ぬんだなって、四六時中びくびくしていることが、彼らにはすぐ伝わっちまうからね。痛い思いはしたくないけど、痛みは取り除きたいな。救おうとして、救えなくても、怒らないし、恨まないから、恨まないでいてくれる?殺そうとして、殺したんじゃないなら、怒らないし、恨まないから、恨まないでいてくれる?緊急事態なんちゃらに阻まれて、営めないあなたの、悲しみが詠われる場所、インターネット。

2021年1月4日の夜

おしえて鼻歌!どこで選曲してくるの。今朝は『潮風にちぎれて』だったね。今夜は、だから、流線型'80を聴きながらご飯を食べているよ。それから!ああ、いつまで男らしさに拘る予定なんだ!神楽坂の小洒落たお店で一杯やるのに、特攻服じゃまずいだろ?

2021年1月3日の10時

先という先が冷たい部屋だ。暖房をつけるサインは、『ジンジンしてきたら』。一人ぼっちの部屋をあったかくすることは、まことにつまらないや。適切な消費なのか、ただの浪費なのか。自死を選ぶことなく生き抜け。通りすがりの野郎を招き入れられるくらい魅力的な孤独に仕立てて。

2021年1月3日の0時

ドスン、そしてスックと、ボディガードのごとく玄関の脇に配置され、見る者を、アッとかア〜とかフーンとか言わす、門松。それが示すものとは一体。飾る者のセンス、懐具合、見栄……そこには代々続いているから、めでたいからなどの、まじめな理由もあろう。松が三段とか、竹が五本とかいう、ぶっとんだ映えな門松なんてないのかな。悲しいのは、近くのマンションの門松がちんちくりんなこと。安っぽく見えるのだ。なんなら生花でもいいのに。つぼみのたくさんついた立派な梅の枝なんて飾ってあったら、住民テンション上がるでしょ。