our melody

損は得の香り……鍋に蓋……感動的刺身。もずく味のコーンフレークに、オーツミルクがかけてある原宿名物『オシトリーヌ』。並んでまで食べた甲斐があった。わたしは丸裸にカルダモンパウダーを纏っていて斬新な木曜日。キャラメル色した戦士が唐突に歩道橋で叫ぶ「紋章はどこだー!!」マイメロディ英恵がこっそり歌い出す「紋章悶々、門戸にうんこ」こりゃ初台まで歩くのは思いやられる………鯵の鯖……鮪に藻塩……キャリーケースから出て来ようとしているおじさんと目があってしまい、サコッシュから赤い汁がとめどなく出てくる。ユアメロディ史上最大の危機を感じたわたしことユアメロディ春樹のセリフ「急ぐよ!!」マイメロディ英恵の腕を勢いよく引っ張る。「遺体!遺体よ!!」さっき路地の洋菓子店で買ったパウンドケーキの齧った部分からたしかに遺体の下半身が覗いている。ピキィッ!!!……胡麻から牡丹……無花果マリアージュ……ポジティブショートニング配合酵母発酵済……この状況にすっかり似合ってしまう慣用句が泉のように湧いてくる。「きゃー!ユアメロディ!赤いけど少し赤い!!」マイメロディの指差す部分を見ると、たしかに蚊に刺されたように赤くなっている。サコッシュから溢れる赤い汁はどうやらまだわたしの服を汚しきってはいないみたいだ。キャラメル色した戦士がまだ叫んでいる「この国は板橋ルールなのか!!」唐草色の衛生士が羽ばたくのをやめて彼のそばに降り立つ。「はい、つくね……」源屋の焼き鳥を買ってきたらしい。気が利く衛生士だ。今やおじさんはキャリーケースからすっかり出てきてしまい、けやき並木を人並みに歩いている。「ユアメロディ、急がなくていいの?」マイメロディが顔を覗き込む。「ああ、もういいみたいだ。源屋の焼き鳥、食いたくないか?」「食べたい!食べたい!」「でも、初台?」「え、初台?」「はつだい」「はつだい?」「はつだい………はは、ははは!」「はつだい!あは、あははは」