白米の話

ごめん、やっぱりセックスの話だけど、わたしはセックスがしたいんじゃなくて、もう少し贅沢な射精がしたいんだと思う。この、もう少し贅沢な射精とは、つまりシチュエーションのことで、他人の温度、他人の感触、生きている(死んでいない)他人の存在を意識して至る絶頂のことを言うんだと思う。挿れたくはない、挿れられたい気持ちはほとんどない、お互いに服を脱ぐ、裸になる、そう、裸でなくちゃだめだ、でも、最初からじゃなくてもいい、いずれは裸になる、そうだよ、やがて必ずと言っていいほど繊維が不快になるんだ。繊維やブランドやデザインで飾られない、ありのままの肌、"あなた"という温かいオカズで、白米=時間を頂く………"あなた"はすじこかもしれないし、"あなた"は肉厚なシャケだろう。"あなた"にしてみれば、わたしはごぼうのぬか漬けかもしれないし、わたしはもやしのナムルだろう。ラグビーみたいに激しくて傷だらけで汗だくになるスポーツのような行為を望まない、休日の公園でするキャッチボールあるいはバドミントンのようなじつに穏やかで誰にも妬まれず咎められないそして勝敗のない――そういう意味ではラガーマン精神の――2つの肉体のそのうちのひとつにわたしはなりたい。そんな2つの肉体が、美味しそうに、じつに美味しい白米を頬張る空間を夢見ている。